財政能力の許可要件とは
産業廃棄物収集運搬業許可には、事業を的確にかつ継続して行うことのできる経理的基礎を有することが必要です。
理由としましては、財政状況危うい業者に産業廃棄物収集運搬業許可を与えてしまうと、結果として環境汚染・環境破壊につながる危険があるためです。
考えてみればそうですよね。
例えば、収集運搬の依頼を受注している業者が破産してしまったら、その産業廃棄物はどうなるのか。
財政状況危うく、少しでも廉価で仕事を請け負う業者が適切に処理や運搬を行うのか。
不法投棄に繋がっていないのか。懸念はありますよね。
実際、環境省発表の令和2年度の新規判明事案の不法投棄量は5.1万トンであり、依然として不法投棄問題はあります。
このすべてが、財政状況危うい業者によるものではありませんが、許可権者としては少しでもその可能性をなくすために要件を課すことは当然といえます。
では、事業を的確にかつ継続して行うことのできる経理的基礎を有するということは具体的にはどういうことなのか。
会社の決算が赤字の場合は一切許可がでないのか。
東京都における申請の基準を詳しくご説明いたします。
東京都における財政能力の証明
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1法人税の納税状況確認
まず、東京都においては法人税の納税内容を確認します。
申請にも添付する法人税の納税証明書(その1)にて確認できます。
- 直近の納税額が1円以上かつ、直近の3年間に未納税額がなければ経理的基礎を有するといえます。
- 直近の納税額が0円の場合、又は直近の3年間に未納税額がある場合はステップ2へ。
すなわち、「ちゃんと利益上がっているから、法人税が課税されていますよね。」
「課税されている税金をしっかり納めてるので、キャッシュが回っていないことはないですよね。」
と許可権者の役所側が企業としての財政能力を確認しています。
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2債務超過状態の有無
直近の決算書で債務超過か否かを確認します。
債務超過とは決算書の貸借対照表において、負債の総額が資産の総額を上回る状態を言います。
債務超過であるかどうかは、簡単に言うと決算書類の貸借対照表の純資産の部にある純資産合計の金額で確認できます。
この純資産合計がプラスなら問題ありません。マイナスである場合はステップ3へ。
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3返済不要な負債の有無
返済不要な債務が無い場合は中小企業診断士、公認会計士又は税理士により作成された「経理的基礎を有することの説明書」が必要になります。
返済不要な債務があり、それが債務超過額以上の場合は、不要であることが分かる書類を提出すれば足ります。(会社役員の貸付等)
経理的基礎を有することの説明書の概要
経理的基礎を有することの説明書には
- 債務超過に陥った理由として、いつ、どのような理由で債務超過になったのか
- 現在の債務超過額及びそれを脱するための対策
(具体策・見込利益額・債務超過解消見込年度)
を記載しないといけません。
中小企業診断士、公認会計士又は税理士に財政状況を直近3期分の確定申告書・決算書類から確認してもらいます。
そして、現状赤字の理由やそれを解消するための具体策の提案をしてもらい、その上で適切に産業廃棄物収集運搬業を行うことができる旨を事細かく専門的見地から記載してもらいます。
具体的には、
- 赤字に陥った要因としての支出項目の分析と今後の支出削減目標の策定
- 売上高の目標値の策定とその達成のための具体策
- 支出削減目標と売上高目標の達成のための総合的な計画
といった内容を申請する会社の決算書を確認して記載してもらいます。
併せて、「経理的基礎を有することの説明書」を作成した方の資格証の写しも必要になります。
そして、この経理的基礎を有することの説明書が出せれば現状決算が赤字でも産業廃棄物収集運搬業許可取得に繋がります。
弊事務所においてはお付き合いのある中小企業診断士、公認会計士又は税理士への手配も一括して行うことができます。
産業廃棄物収集運搬業許可取得を契機に、専門家による分析を経て、経理的説明書の通りに事業運営をしていけば、実際に赤字解消にも繋がり、会社の業績もあがると思います。
まとめ
・財政能力は法人税の納税状況や決算書類で確認する
・決算が赤字でも許可取得の可能性はある